投稿日 : 2021年10月27日
子どもの発達段階や教育に関連するキーワードの中に、「9歳の壁」という言葉があります。お子さんのいるご家庭では良く聞かれる言葉かもしれませんね。
今回は、この時期の子どもの特徴を知り、「9歳の壁」につまずかないために、具体的に何をしたら良いのかを一緒に見ていきたいと思います。
9歳の壁とは、「子どもの発達過程における、子どもごとの発達個人差によって生じるつまずき」のことです。
子どもの脳は、小学校高学年~中学校の間に、大人とほぼ同じ状態まで発達します。特に9歳~10歳頃、心身ともに飛躍的な成長を迎えます。
また学校では、小学校低学年時の「身近で、具体的」 な学習中心だったものが、「抽象的」な高度な学習へと移行していきます。
算数を例に挙げると、3年生の後半から、「小数」、「分数」、「□を使った式」の学習が始まり、高学年になると、「小数/分数のかけ算、わり算」や「分母の異なる分数の計算」などへと移行していきます。
しかしながら、子どもの成長「時期」や「度合い」が、それぞれ異なることで、個人の成長差=能力差、と捉えられてしまうことが少なからずあります。
結果、9歳ころから、クラスの中で学習に対する理解度の差が顕著になり始め、できる子は自分に自信を持ち、一方そうでない子は、自分に劣等感を抱くようになってしまいます。
9歳の壁の問題点
子どもが自分自身に劣等感を抱くことが増えてくると、学習に対する意欲が低下していき、ますます勉強が分からなくなってしまいます。
「勉強つまんない」「授業わからない」と子どもがシグナルを発する前に、出来れば、つまずいている所をみつけ、助け舟をだしてあげてください。
勉強を通して小さな成功事例を積み上げて、自分に自信が持てるようにできると理想的です。
この時期になると、お友だちと比較して、自分のことを考えられる能力がつくため、「勉強できるかも」「これ得意かも」と自己肯定感を高めてあげられると今後の学力によい影響を与えられます。
具体的にはどうすれば良いか
1. 考える力を育む
学習において「抽象的な思考への適応」や「他者視点に対する理解」が求められるようになります。これらに対応するため、ご家庭で「考える力を育む」ことを意識することが有効です。
前者における、おススメは、読書です。特に小説などの物語が望ましいです。主人公の考え方や生き方の疑似体験を通して、自然と物語を推理する力や抽象的思考が身につきます。また、語彙を増やすことや、頭の中で活字を映像化する訓練にもなります。
ただ、読書がいいことは分かっていても、なかなか子どもが本を読んでくれない・・ということも多いですよね。読書の習慣をつける方法については、また次回のブログでご紹介したいと思います。
後者については、お友だちやおじいちゃんおばあちゃんなど、「他者(自分以外の人)の気持ち」を考えるきっかけを作ってあげることです。他人と自分の区別がつくようになってくるので、お友だちとケンカしたときや、自分の思い通りにならなかったときに、「〇〇ちゃんはどうおもっているかな」と聞いてあげてください。
2. 他者比較や結果を褒めるのではなく、プロセスや姿勢を褒める
この時期、クラスのお友だちと比べることで、時には自分は劣っている、と感じることがでてきます。劣っていることばかりに注目すると、それが悪い影響を与え、何をやってもできないかも、と勘違いをすることがあります。
良くない結果が出た時には、その過程やそれまでの姿勢に目を向ける様にしてあげてください。
例えば、テストの点数が良くなかった時、まずはちゃんと頑張れたのかどうかを確認してください。もし、しっかり頑張ったけれど結果がでなかったのであれば、お子さんが頑張っていたことなど行動や努力を認めて下さい。出来れば、褒めるときは、事実を具体的に褒めてください。
やってもいないことを褒めるなど、適切でない褒め方を繰り返すと、家庭と学校での評価は違う、と不信感を抱く逆効果になることもあるので注意が必要です。
3. 分かっている所まで戻って教える
もし勉強が分からなくなってしまったら、つまずいてしまった所まで戻って、教えてあげることが大切です。一部の理解不足により、そのあとの多くのことが分からなくなってしまっていることがよくあります。
教科書や参考書をもとにお子さんと一緒に問題を1つ1つ確認し、できなくなってしまった個所を見つけ、それをできるようにしてあげるとよいでしょう。
参考文献
・文部科学省 初等中等教育局生徒課(2009) 子どもの徳育に関する懇談会 「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」
・帝京科学大学 大須賀隆子(2016) 帝京科学大学教職指導研究「児童期の認知発達と心理発達の特徴と支援について」